往療後記 R2.8.15

本日の往療がだいぶ前に終わりました。

今日伺う患者さんの中に、96歳のおばあちゃんがいます。

僕の患者さん歴で最高齢は97歳なんで、記録更新を期待しています。

でもこの年になると何の不調も無いとはいかない。

最近、めまいがしたりお腹が悪くなったりなので気になっています。

 

大体この人、「もう年だから。。」が口癖。

何かあるとそうやって納得するというかあきらめる。

この「年だからしょうがない」という言葉、

意外とお医者さんが患者さんにすぐ使ってしまいます。

そりゃあ、高齢者の人はいろいろで治りにくい。

言ってしまいたくなるケースも多いですが、僕は言わないようにしています。

 

だって、それをいっちゃあおしまい。

歳でも、病気を持っていても、太ってても痩せていても、体力がなくてもなんでもかんでも、

その条件から少しでも良くするのが僕らの仕事だからです。

病気を治すのではなく、患者さんを楽にすること。

かっこつけすぎですがそれをこころがけてやってます。

 

往療後記 R2.8.12

8月12日(水)今日の往療が終わりました。

 

今日の患者さんの一人に、かわいいおばあちゃんがいます。

いつもニコニコ、暑い時も寒い時も労ってくれます。

でもこの方、75年前の今頃、とても苦しんでいたそうです。

 

それは、生き残ったから。

 

はだしのゲンなんかを読んでて、「生き残ったことへの罪悪感」というものがあることは知ってはいました。

でも、それを直接聞いた時は少し驚きました。本当にそんな気持ちになるのかと。

 

 

Aさん(仮)は、75年前の8月6日、連日続いていた勤労奉仕を体調不良でこの日だけたまたま休んだそうです。

そして、あの悲劇が起こった。

避難所となった自宅の納屋に寝かせてあげたたくさんの人たちからの視線。また、子供を亡くした近所の人たちの視線。

「なぜあなたは無事なの?」「みんな死んだのになぜあなただけ?」

そう問いかける視線に耐えられず、Aさんはしばらく家から出ずに隠れるようにして暮らしました。

クラスメートは全員亡くなり、後日学校へ行ったときはその無人の静けさに恐怖を感じ声を上げて泣いたそうです。

 

8月、こんな暑い日になると当時のことをよく思い出す。

そう言って、今日も話してくれました。

 

しっかり、覚えておこうと思います。

 

 

慢性浮腫の患者さん

若い頃の立ちっぱなしハードワークが堪え、下肢静脈瘤のオペも経験した患者さん。下腿のビフォーアフターです。

写真は分かりにくいですが足首に近いところがカチコチになって痛みます。

アフターでは、細くなっている他、足の内部の圧力も減って痛みも解消しています。

年齢重ね施設に入所し、座ってることが多いため元々の体質もあって下腿の浮腫で悩まされています。

他の患者さんでもそうですが、浮腫がある場合、その解消が第一の目標になります。

重篤な疾患の予兆の場合もあるから、まずそこをクリアにしておきます。

で、浮腫の治療。これは専門ではないのですが、これくらいは出来ます。リンパドレナージュの手法で、30分かけてこれだけ細くします。

でもこの方は慢性症状です。次の日には戻ってしまう。

本来、運動、生活習慣改善で再発予防するのですが体が言うこと聞かないのでそれも叶わず。

施術後の足が軽いタイミングで歩行訓練を行い、筋力アップと循環の改善などを狙っています。

同じように浮腫に悩んでいる方、まずは座りっぱなし、寝っぱなし生活を変えることから始めましょう!

それでダメなら当院まで。(笑)

関わりの終わり

いつもお世話になっているグループホームへ。

今日の患者さんの施術を終え出口に向かうと、見覚えのある女性が大荷物を運んでいた。

Rさんの奥さんだ。

Rさんは僕の患者さんで、ほぼ寝たきり状態からかなり改善し、車いすで日中を過ごせるようになり、手が使えるようになり自力で食べ、コミュニケーションも復活した人。

だがいかんせん高齢、小さい脳出血を繰り返しとうとう入院、中止になっている人だった。

こういう施設では、あまり長くは退院を待てない。ご状態も良くならないので退所、後は病院や医療系の施設で過ごすことになる。

奥さんを捕まえ、挨拶し、お世話になったお礼を言う。荷物運びを少し手伝わせてもらった。その中には、ポジショニングのためによく使った長いクッションもあった。

クッションは病院に持っていき、向こうのスタッフさんが使うことになるだろう。僕がRさんと会うことは、多分、もうない。

少し切ない気持ちになったが、最後にご家族に挨拶出来てよかった。本当にお世話になりました。

連日の緊急往療。

パーキンソン病由来の疼痛。

パーキンソン病の筋固縮、無動などからの二次的な症状でなく、脳神経系の損傷、機能障害から直接起因していると思われるもの。

あまり多くないケースだけど、当てはまる人はかなり苦しむ症状です。

足が痛い、手が痛い。

実際にその部分の筋、骨、神経などの組織が傷んでいるなら治療しやすい。

そこを治せばいいわけだから。二次的症状もこれに近いです。

でも、パーキンソン病の脳の病変に直結して身体に痛みが出ている場合、

痛む場所を治療しても一時的に治まるだけ。

Tさんの場合、ひどい痛みが左のももにありましたが、ドーパミンアゴニストの貼布薬でコントロールがほぼ出来ていました。(アゴニストがわからない方はググってみてください。m(__)m)

けど先日、ちょっと薬の飲み方を変えたときにたまたま精神的ストレスも重なって、痛みが出てしまいました。

痛みの記憶が蘇り、不安と怖さで軽いパニックを呼び、貼布も剥がしてしまい、余計に痛くなり。

何かあったら電話してくださいね〜。といつも言ってあるので、僕のところに連絡が来ました。

駆けつけてみると、明らかに表情が違う。

硬くこわばり、1点を見つめ、血の気が引いています。

こういう時、まず初めにすべきこと。

僕自身が落ち着くこと。

必要なのはマッサージのテクニックなどではありません。

要は、どうやって落ち着いてもらうか。安心感をもってもらうか。

いつものようにマッサージしながら、気持ちが鎮まり、不安が消えるように誘導します。

普段と同じの様で、ちょっと違う。そういう意味では、テクニックかもしれません。

2.3分で表情が戻り、頬に赤みが差し、もとのTさんに戻りました。

ただ、一度不安感を持ってしまうと、一人になったときにそれがまたぶり返します。

今回は同じようなコールが日を変えて4回ありました。

その後、もう大丈夫というのがわかり、普段通りに戻りました。

精神的な要素で症状を悪化させてしまう人は本当に多いです。

ストレス→症状悪化→それがさらにストレスになる→さらに悪化→以下同じ

とならないよう、→を切ってしまうことが大事ですね。

「またなってしまうかもしれないけど、また呼んでくれれば治りますからね」って言っときました。

それがお守り代わりになればいいなと思います。

ある被爆者の話。

水曜に週一回訪問する患者さん、Yさん。

この夏の間、体調優れずずっと休みで心配だったけど、

今月から再開している。

笑顔が素敵な小さくてチャーミングなおばあちゃんだけど、

親兄弟もご主人も先に行ってしまって寂しい。楽しみもないから早くあっちに行きたい。

とばかり言っている。最近になって、

これまでずっと思い出さなかった被爆当時を再々思い出すらしい。

学校があった舟入あたりを、死体を踏みながら帰ったという。

足の踏み場もないほどの、死体の山。その足裏の感触を今頃になって思い出すらしい。

10代の女の子が味わった過酷な体験。ずっと封印していた記憶が漏れ出ているようだ。

それを話したYさんの眼は、赤く涙ぐんでいた。

僕もヤバかった。歳取るごとに、涙腺が弱くなっているから。

辛い体験を抱え生き抜いて、今は早く召されたいというおばあちゃん。

毎回、なんとか笑かそうと思って、勝率は五分五分くらいなのだが、

今日は、最後に僕がやられた。Yさん曰く、

“死にたい死にたいって言いながらねー、毎回宝くじ買ってるのよ。あれ、楽しいわね。”

だって。

何だか救われた思いがした。

Mさんの話2

Mさんの話1から続く。

そうして週2,3回マッサージを続けていたが、施術後は良くなり笑顔で別れ、

次に行くと痛みで怒られ、という繰り返し。寒さで増悪するので、冬の間は治りが悪いからなるべく冷やさずに少し自分でも動かすように言っていた。

そんなある日、離れて暮らす息子さんから、ハリがいいんじゃないかといわれたらしい。

なにせ思い込みが強い性格、そういいだしたらハリなら治ると言いだして聞かない。やったことも無いのに。

もちろん対応するけど、初めての場合特に一時的に悪化するかもしれないよと注意してから開始。そういっておかないと、思い通りにならなかったときストレスで余計増悪し、逃げ場をなくしてしまうから。

ハリを続けるうち、痛みのスケールは10から4、あるいは3くらいになってきた。

寒くなっても安定しているし初めを考えたらもうだいぶ良くなっているが、行く度にあっちが痛い、こっちが痛いと訴える。

でもこのあたりから、他のサービスの人やケアマネにも怒鳴り散らすことが無くなり、サービスを受け入れるようになってきたらしい。

この人の場合、依存傾向の強さ、独居の孤独感、先の不安感から痛みを増幅、周囲にあたるから益々孤立、という悪循環だった。

痛みが無くなるにつれ、愚痴を聞くのがメインになってきている。これはこれで、大事な治療だ。

でもそろそろ前向きな気持ちに持っていき、依存傾向を消していきたいところだが、長年培ってきた性格、なかなか上手くはいかないだろうね。

気長に頑張っていきます。よろしく、Mさん。

Mさんの話1

訪問治療で3年くらい行っている患者さんの話。

お世話になっているケアマネさんからの紹介で始まったのだが、このケアマネさんの紹介は支援困難事例が多い。

そもそも我々に回ってくる仕事は、大抵介護保険の中では利用者利益にならないケースが多いのだが、この人、Mさんもそうだった。

年齢70代後半、男性、二十数年前に脳梗塞を発症、右片麻痺。(利き腕、効き足)麻痺の程度は中程度、手は物を押さえつけるなどの単純動作はできる。足は拘縮がありつつも足関節は概ね90度底屈可能なため室内はつかまり歩きが出来る。患側に痛みは無い。主訴は左肩甲帯から左上肢全体の疼痛だった。痛みで夜も眠れないとの、激しい訴えだった。

痛み止め、湿布などは効かず、訪問リハビリも受けていたが患側の訴えは無いため患側中心にリハを行う担当者さんに不満を抱き、怒り、怒鳴る。

ヘルパーさん、ケアマネにも痛みの訴えで怒り出し、サービス拒否も頻発して困った困った状態だった。

そこに呼ばれて入ったわけだが、廃用手をかばってオーバーユーズからくる上肢痛、長年の蓄積が簡単に治まるわけも無く。

なだめ、すかしての治療になった。

こういう場合、大事なのは施術自体よりもまず傾聴。

痛みというのはとても個人的なこと。その人の痛みは絶対に他人には理解できない。もちろん、僕にもできない。

いつも患者さんに行っていることは、

「僕はあなたの痛み、苦しみを完全にはわかってあげられない。けど、同じように苦しんでいる人をたくさん診てきたからかなり正確に想像はできる。つらいですね。」

ということ。Mさんにもこの姿勢で臨んだ。

しばらくマッサージを続けると、ある程度心を開き、雑談ができるようになった。同じタイミングで痛みが少し減ってきた。

よくあることだが、ストレス、怒りが痛みを増幅し、固定化していた。思い込みが強く、頑固な性格の人が陥りやすい状態だ。

 

長くなりそうなので、続きはMさんの話2へ。

 

残念だけど嬉しい

先日届いた郵便物。

数年来、患者さんの同意書を書いていただいていた主治医の先生からのもの。

パーキンソン病の患者さんで度重なる脊椎の圧迫骨折のため施術開始時には90度、それ以上背中が曲がってしまっていた女性です。

高齢のため歩行も困難、訪問マッサージの要件には文句なく当てはまる方です。

そのため、これまで長い間快く同意書を書いていただいていたのですが、この度突然「もう書けない」とご丁寧にも先生自ら電話をして下さいました。理由は、レセプトが不受理になるということ。

保険者が、同意書の発行数が多いドクターのレセプトを不受理にすることがあるとは聞いてはいました。その波が来たようです。我々としては言いたいことは色々ありますが、お世話になった先生が決めたこと、受け入れるしかありません。

お忙しい身で電話してくださっているので手短にこれまでの感謝を伝え、電話を切りました。

それで終わりと思っていたら、この郵便です。なにかな、と思い開けてみると、写真のようなお手紙が。

いつも再同意依頼の時に同封している返信用封筒を返送していただき、お手紙までつけていただいて。

お世話になったのはこちらのほうです。ありがとうございます。

 

今まで何件か再同意を断られましたが、ただ無視されるだけのことが多いです。

こちらから問い合わせて、「もう書きません」といわれて電話を切られるのが普通です。

この先生は、「原さん、長い間きちんと報告書を上げてくれていましたね。」

電話でねぎらいの言葉までかけてくださいました。

パーキンソン病の専門で長い間第一線におられる先生の人間性に触れ、勉強させていただきました。

残念だけどありがたく、嬉しい出来事になりました。

 

パーキンソン病

パーキンソン病。

訪問マッサージをやっていると、脳卒中後遺症と同じくらい沢山出会う病気です。

今朝訪問したTさん、今日は調子が悪かった。(症状は日ごと、時間ごとに全く違うのがこの病気の特徴です。)

「昨日も悪くって、足がひきつってだるくって・・・。今日は家に誰もいないし・・・。」

と、かなり不安そう。(精神的要素が症状に出やすいのもこの病気の特徴。)

大体、マッサージ、リハビリを終えると症状が改善するのが常なのですが、今日はちょっと趣向を変えてみた。

まずゆっくり落ち着いて訴えを聞いた後、神経の促通法を自分でやってもらった。簡単な体操だ。ゆっくり、落ち着いて、無理ないように。PNF(神経筋促通法)に基づいたやつを、簡単に。

マッサージは無しで、一度立ってもらい、歩いてもらう。

「あ、さっきより楽・・・。」   いい感じです。

その後、いつも通りマッサージとリハビリ。

あんま、指圧、筋膜リリース、モビリゼーション、整体など、良いと思った手技をジャンルを問わず使って施術。

最後にもう一回歩いてもらうと、

「ああ・・。最初と全然ちがう。」と。顔つきもだんだん明るくなり、頬に赤みが差してきた。

パーキンソン病は、錐体外路症状を伴う病気。要は、動きの調整が付きにくくなる。上のイラストが主要4症状だけど、人によってさまざま。

Tさんは、外側広筋に強い痙攣が起き、痛みが酷かった。

今は、ニュープロパッチという貼付剤でかなり軽減しているが、少し痙攣が起こるとその恐怖から不安がおきてしまう。

僕がいかない日でも、少しでも症状をコントロールして欲しくてマッサージを後回しにしたけど、うまくいった。

明後日、明るい顔でまた会えるのを願いながら、Tさんの家を後にした。