水曜に週一回訪問する患者さん、Yさん。
この夏の間、体調優れずずっと休みで心配だったけど、
今月から再開している。
笑顔が素敵な小さくてチャーミングなおばあちゃんだけど、
親兄弟もご主人も先に行ってしまって寂しい。楽しみもないから早くあっちに行きたい。
とばかり言っている。最近になって、
これまでずっと思い出さなかった被爆当時を再々思い出すらしい。
学校があった舟入あたりを、死体を踏みながら帰ったという。
足の踏み場もないほどの、死体の山。その足裏の感触を今頃になって思い出すらしい。
10代の女の子が味わった過酷な体験。ずっと封印していた記憶が漏れ出ているようだ。
それを話したYさんの眼は、赤く涙ぐんでいた。
僕もヤバかった。歳取るごとに、涙腺が弱くなっているから。
辛い体験を抱え生き抜いて、今は早く召されたいというおばあちゃん。
毎回、なんとか笑かそうと思って、勝率は五分五分くらいなのだが、
今日は、最後に僕がやられた。Yさん曰く、
“死にたい死にたいって言いながらねー、毎回宝くじ買ってるのよ。あれ、楽しいわね。”
だって。
何だか救われた思いがした。